2011年7月1日金曜日

1日目 夜、今夜の宿は・・・ 『八方ふさがり』

 ホテルを目の前にして元来た道を引き返すユウとマサシ。星原君の顔が引きつる。たった今、今日はホーチミンで宿を取ると言う話をしたばかりだというのに、彼らはその存在に気付いていないのだ。ルール上星原君は口を挟むことができない。
「スゲー、うまそう!!」
豚の丸焼きに目を奪われるマサシ。
「来た道を戻りますね」
主導権を取り戻し、地図を見ながら振り返るユウ。
「とりあえず、どこに行くか決めてから動き始めないか?」
さすがに闇雲に動き回るのに精神的な苦痛を感じ始めた星原君。そもそも決定権のない彼にとってはあちこち引き回されている感覚しかない。
「決めました。今来た道を戻ります」
即断即決のユウ。
 星原君の重い足取りとは対照的に賑わいを見せる夜の街。
「よし、じゃあ今度はこっちに行ってみよう」
ずんずん前に進んでいくユウ。
「いやさ、お前ら目的地をちゃんと決めて歩こうよ!!」
さすがにあまりの適当さに苦言を呈する星原君。
「じゃあ俺が決めました。あっちに行きます。」
きっぱりと言い放ち、ずんすん進んでいくマサシ。星原君が言いたいのは、『せめて宿のありそうな場所にアタリをつけてから動け』ということなのだが、全く通じていないようだ。即断・即決・即行動。私の好きな動きだが、このタイミングでは少しきつい。
 地図を手に入れたことでいくらか方向感覚のわかるようになったユウとマサシは、今まで足を踏み入れたことの無いゾーンへと進んでいく。
「しっかし、ホテルないなぁ・・・」
周囲を見回すユウ。この行動、もう少し早くやっていればすぐにホテルには入れたのだが。
「光君がシン・カフェのあたりにあるって言ってたぜ?」
マサシが言うが、シンカフェを出てすでに2時間半は歩いている。
「え?今から戻るの?」
さっきあったホテルに戻りたい星原君だが、私が彼に目配せをしてその先を発言することを禁じる。
「んー、とりあえずもう少しこの辺あるってみましょう」
結局まだ歩き続けることに。現在時刻は午後9時だ。
 既に声をあげる気力も無くなった星原君と、ほとんど惰性で前に進むユウとマサシ。あまり地図を見ていないようだ。
 こんな時間でも開いている八百屋。八百屋と言うよりは果物屋か。ドリアンなど南国のフルーツが店先に並ぶ。
 通りの向かい側にはおもちゃ屋が。古いタイプのおもちゃがたくさん売っている。
「やべぇ・・・マジ疲れた・・・ってかホテル無いし」
道路にしゃがみこんでしまうユウ。
「どうするか・・・」
さすがにマサシも疲労が激しいようだ。
二人とも、先ほどまでの勢いは無く、さらに現在位置も見失ってしまったらしい。現在、自分達がどれだけとんでもない状況にあるかをやっと把握したようだ。

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