2011年6月30日木曜日

1日目、夕飯 『しばしの休息』

 自転車屋を出てすぐ。簡単な食堂はいくらでも立ち並んでいる。その中の一軒に入る一行。
 衛生環境にいくらか不安が残るが、安くてうまい飯が食べられる。ただし、たまにはずれがあるので注意しなければならない。見た目と味に大きな開きがあるのもポイントだ。何度も来ているならばいろいろチャレンジするのもいいだろうが、今回はあまり奇抜なものを頼まない方がいいだろう。
 ガラスケースの中だけでは収まらず、さらにいろいろな食品を並べてある。そして写真を撮っていると無理やりピースをしながら割り込んでくる店員。残念ながら顔は写らなかったね。
「よし、俺から行って来るわ」
「OK、荷物はまかしとけ」
もともと仲のよかった二人だが、連携もよくなってきているようだ。先生に荷物を預けないところが関心。もちろん荷物を盗まれそうになっても基本的には放置するがね。
 財布を取り出す星原君。妙にあわてているように見える。大丈夫、食べ物は逃げていかないから。
 もくもくと食事を続ける一行。本日の疲れがどっとのしかかってきているようだ。実は今日の朝日本を出たばっかりなのだよね。異国の地に来ていきなりこれだけ歩き回ればつかれて当然だろう。ちなみに一食大体250円程度だ。
 「うんめー、マジうめー」
飯を食ってご満悦の星原君。 ただ味はそれほどよくは無かった気もするのだけど、空腹が調味料になっているのか?
 そしてこちらが本物の調味料。
「さて、ところで自転車の件なんだけど、僕たちがさっき見つけたのは新品の自転車を扱っている店だ。カンボジアでギアつきの自転車が中古で5000円くらいという情報は覚えているね?」
もくもくと食事を続ける3人。とりあえず今は休息と食事が第一か。
食事が終わると再び行動開始。時刻はすでに7時40分をまわっている。これからどういう行動をとるのか楽しみだ。
「行きますか。」
食事が終わり、元気を取り戻した星原君。もともと元気だが先ほどまで見えていた疲労が嘘のようだ。もしかして空腹だっただけ?
「さて、中古の自転車屋を探しに行きましょう」
予想しないユウの言葉にびっくりする私。さっきの私の言葉をちゃんと聞いていたとは思わなかった。しかしすでにもういい時間だぞ?これから中古屋など見つけることができるのか?

1日目、自転車屋は見つけたが・・・『予算の壁』

シン・カフェで情報を仕入れた二人。今回はマサシが地図を持っている。彼の生存本能に火がついたようだ。少年の成長を目の前で見れるのは私にとって最も喜ばしい瞬間だ。
「んーと、あれがこっちで、これがそっちだから・・・」
マサシが必死で頭の中に地図を読み込む。そして大体の場所を把握したらしく、今度は確信を持って歩みを進める。
雨がまだぱらぱら降っているので、突然の土砂降りに備えてレインコートを脱がない一行。内部は汗だらけである。さすがにフードはかぶっていない。
「あの辺の通りじゃね?」
ユウが指差す方向には地図の場所と正確に一致している。やっと調子が出てきたようだ。
辺りは暗くなり始めているが、店はまだ開いているようだ。まだ夜7時である。そしてこの辺りは私のよく知っている自転車屋がある。初回のアジア修行もそこの自転車屋で自転車を購入した。
「ヨッシャァ!!」
自転車屋を見つけてガッツポーズのマサシ。そして星原君が最もかぶりついている辺りがポイント。彼は日本国内を長距離自転車で走ることが結構多く、この手のものには詳しい。
店の中でもロードレーサーに目が行く星原君。というか、あんまり高いのは買わないぞ?あくまで『今だけ使う』自転車なのだから。というかユウもマサシも自分で選びなさい!!
「これでやっと走れるけど・・・もう夜だ・・・」
基本的に生徒に判断を任せることになっているが、さすがにこの時間、この天候で出るのはリスクが高い。自転車で走っている経験の長い星原君もそう考えているようだ。
自転車のお値段はギア無しで7000円ほど。私はあまり足を高速回転させるのが得意ではないのでギアがないときつい。
「えーっと、マサシもユウもちょっと考えてな。長距離走るとするとギアが無いとつらいぞ?というか僕がパワーでこぐタイプだからギアが無いチャリだと間違いなく足手まといになる。」
その僕の言葉で相談を始めるマサシとユウ。しかしギアつきの自転車は10000円近くしてしまう。しかし、ギアが無い自転車で長距離は走るのは難しい。1日60km程度が良いところだろうか?
そしてユウが口を開く
「えーっと、じゃあ自転車はここでギア無しを買うとして。」
「そのまま出発するか!!」
マサシもイケイケである
「おいお前ら、まさかこんな雨の中走るつもりかよ、それも夜中だぜ?ってか腹減ったし!!」
その言葉にさすがに苦笑いの星原君。確かに朝から機内食の1食と露天のポテトしか食べていない。一行はとりあえず腹ごしらえをすることにした。私としては飯を食べている間に何とかギアつきの自転車を購入する方向に持っていきたいところだ。

2011年6月29日水曜日

1日目、シン・カフェで作戦会議 『なんでここに来た?』

 とりあえず無事にシン・カフェに着いた一行。今はシン・ツーリストと名前を変えているようだが、立派な旅行代理店だ。
 ベトナムの旅行代理店の中でも1,2を争うきれいな店内で地図を見つけるユウとマサシ。
「おお、地図がある。もらってこーっと」
ユウが地図に手を伸ばした。マサシはジュースを飲んで一服。地図が手に入ればかなり動きやすくなる。このような旅行のスタイルでは現地で地図を手に入れるのは鉄則中の鉄則なのだが、未だかつてまともにそれを認識した生徒がいないというのがすさまじい。ガイドブックが手元にあれば必ずそれを見るのだろうが・・・
「それで、ユウとマサシは何でシン・カフェに来たんだ?」
そう、私はこのせりふが言いたかった。もうベトナムに着いた直後からである。光君が彼らに与えたアドバイスをせっかくだから利用させてもらった。
「え?」
戸惑うユウ。やはりここに来ること自体が目的となってしまい、なぜ今自分達がシン・カフェにいるのかわからないようだ。そう、今回のこの行動はおそらく不正解だったのである。これからバスや飛行機で移動するのであればここがゴールになったのだろうが、ここはあくまでツーリストのための店であって『自転車を買う場所ではない』のである。ニヤニヤ笑いそうになる自分の顔を引き締めながら、私は彼らに問いかける。
「君達の目的は自転車を購入することだろう?その手段としてシン・カフェに来たのかね?」
私の問いかけに口をつぐむ二人。
「いやそれは光君が行けって言うから・・・」
ユウは口にしかけてから、それが大きな間違いだったと気づいたようだ。
「はい、じゃあ今からがんばってこれからの計画を考えてください」
まぁすでに時計は6時30分を回っている。どうせこの付近のホテルに宿をとって本日の行動は終了とかそういうレベルだろう。
ユウとマサシに相談をさせている間に、私と星原君は備え付けの椅子に腰を落ち着けた。斜め前に座る2人の白人系少女を見ながら一息ついた。
「左の子は10年後が楽しみだなぁ・・・ところでこの後はこの近くのホテルを探して宿泊といったところだと思うけど、もちろん口出し無用だよ。」
「なるほど、さすがにこの時間からじゃ走れないですしね。ちなみに私はどっちの子もいけます。」
「懐が広いね。ところですぐそこにうまい屋台があるんだ。宿に落ち着いたらみんなで行ってみよう」
「おお、いいですね」
 と、そんな親父会話が続く私達の元に戻ってきたユウ。
「とりあえず自転車が売っているところを聞いてきます」
少々予想外の展開だ。というかすでに営業妨害の域に入ってしまうのではないかとさすがに心配になる。まぁあまりに彼等の態度が酷ければ、迷惑をかけたスタッフにいくらか握らせてやればよいか・・・
 今回はマサシが主導でカウンターのスタッフに質問する。受身だったマサシに変化の兆しが現れる。そういえばいつもニヤニヤ笑っているマサシだが、ここ数時間は真剣な顔が続いている。
 そして私の予想に反して、スタッフは丁寧に自転車屋の場所を地図に書き込んでくれた。と、いうことはこれからまだ移動することになるのだろうか?
 「先生、ここだそうです」
地図を私と星原君に見せるユウ。
「ではこれからそこに向かうか?ちなみに今日の予定は?」
「えーっと、自転車を買って国境に向かうことになっています。」
iPod touchの計画表を見ながらリピートするユウ。こいつはすでに計画が破綻していることに気づいていないのだろうか。しかしこの時間から走り始めたらさすがにリスクがでかすぎる。だからといって彼らを止めることはしないつもりだ。ベトナムからカンボジアまでの道のりは、街灯がそれなりに整備されているのでリスクは高くないはず。
 そして一路、自転車屋へと向かう。しばしの休息で私も星原君もかなり体力を回復した。国境までならぎりぎり持つか?

1日目シンカフェへの道『ご旅行は計画的に』

 とりあえず、元の場所に戻りつつあるマサシとユウ。かれこれ一時間も歩き続けているので、そろそろ新しい刺激がほしいところだ。空を見上げると少々雲行きも怪しい。高価なコンピュータを背負っている私としては土砂降りは避けたいところだ。
 「なぁ、俺、水が飲みたくなったんだけど、あそこのコンビニ寄らないか?」
私はユウとマサシにコンビニに入ることを提案した。星原君もその意図がわかったのか、やはりコンビニに入ることを勧める。
もちろん純粋に水を飲みたかったと言うのもあるが・・・ペプシ・ブランドのペットボトルが一本35円ほとんどボトルの値段である。
と、私がボトルを購入したときに、店員にシン・カフェの場所を聞くマサシとユウ。星原君が混じっていたので、できるだけ生徒に任せるように声をかけた。今回一番ストレスを感じているのは星原君かもしれないと内心気づきつつも、彼は人間ができているので平気だろうと考え、ストレスのゴミ箱になってもらうことを決める。
手持ち無沙汰になった星原君はアイスを物色。
「おー、なんかこのへんうまそう」
さすがにコンビニの店員ともなると英語が少しは通じるらしく、親切にもシン・カフェまでのルートを紙に書いてくれるようだ。
「土屋さん、これ超うまそう。スイカのアイス!!」
「先生、地図書いてもらいました。」
うれしそうにもらった地図を見せるユウ。これで無事シン・カフェまではたどり着けるな。もちろんそれがゴールと言うわけではないが。
「うめー!!まじうめーよ、このアイス!!」
って確かに『黙ってろ』的なことは言ったけど、そんなにアイスにのめりこまなくてもいいと思うのだよ星原君。それとも何か?私に対する新しい嫌がらせか?
とその時、計ったように突然の土砂降りが。バイクに乗っている人々は、慣れているのかすぐにレインコートを着用して、何事も無かったかのように走る。
もちろんレインコートなどの準備は万端なマサシとユウ。それに比べて私と星原君はレインコートは所持していない。私自身はエマージェンシーブランケットという名前のブランケットを持っているのだが、今これを使うと後で困る。一度広げるとたたむのが厄介でほぼ使い捨てという代物だからだ。
仕方ないのでコンビニで購入。レインコート50円なり。
星原君は200円ほどする強度の高いものを購入した。
・・・背中のギターがあるせいで、星原君の姿は非常に怪しいどこかの特殊部隊のようになってしまっている。
と、目の前をベト傘(ベトナムの傘)を頭に乗っけて歩く人発見。まぁこういう人もいるし、個性ってことでよいのかな?
準備も整い、無事にシン・カフェに向かって歩き出す一行。と、突然星原君が笑い出した。その視線の先には・・・
・・・妖怪タチションおやじ。よくもまぁこれだけ通りの激しい道の真ん中でやれるものだ。これが途上国のレベルということなのかもしれない。武士の情けで正面からの撮影は勘弁しておいてやったが、次に見かけたら正面から撮影の上ネットでさらし者だな。
 さて、公園を歩くことしばらく。地図を片手に歩き続ける一行。
 と、視界に端にツーリストらしい人物を発見する。ユウとマサシもそろそろシンカフェの場所が近いのを感じているのではないだろうか?
 やっとたどり着いたデタム通り。ぶっちゃけた話、ここまでの苦労を考えたらタクシーのほうが明らかに安いという・・・もちろん経験値が上がったので一概に楽をした方がいいとは言えないが、行きたい場所の名前がわかっている場合はタクシーを使うというのもひとつの手ではある。
 と、私の目に衝撃的な光景が。シン・カフェが見当たらないのだ。私自身が見落とすことは考えがたい。そうすると倒産してしまったか移転してしまったか?
 シン・カフェ自体を知らないユウとマサシは付近で再び人にシンカフェの場所を聞く。
 しかし、彼は店の呼び込みだったらしくあまり役には立たない。逆にしつこくついてきてしまった。
と、しばらくそのあたりをうろついていたら、突然The Sinh Touristの看板が。シン・カフェは改装していたようだ。名前も少し違う。とりあえず無事にシン・カフェ(らしきばしょ)に着いたユウとマサシだったが、彼らはここでいったい何をするつもりなのだろう?