とりあえず最寄のJRの駅まではタクシーで移動する。バスでは時間に余裕がないし、4人で移動するならタクシーでもさほど値段が変わらないからだ。
運よく塾の目の前に止まっていたタクシーがあったのでそれを拾う。運転手はさっきまで車内で寝ていたようだったが、プロだから寝起きでも事故を起こしたりはしないだろう。
無事に王子駅に到着。ここから日暮里まで行き、日暮里から京成線に乗り換える。本当は日暮里までタクシーで移動したほうが楽なのだが、少しでも節約をしたいので電車に乗る。
日暮里駅での乗り換え、二人ともその辺に遊びに行くような格好だ。誰もこれらから彼らが海外でハードな旅行をするとは考えていないだろう。星原君も楽しくてたまらないといった表情だ。
そして私は星原君におもむろに500ドルほどを差し出した。
「貸しておくから持っていてくれ。最悪僕に何かあった場合は君が子供たちを安全に日本まで連れてくるんだよ」
「え・・・マジですか・・・でも俺も空港で両替・・・」
「いいから持っていたまえ、理由は後でわかる」
マサシとユウの第一関門。京成線への乗継だ。彼らには3つの選択肢がある。2000円払ってスカイライナーに乗るか、1000円払って特急や普通列車に乗ることだ。
「ここは節約しないといけないから、金のかからない方で行きましょう」
そう言うユウとそれに賛同するマサシ。ちなみに飛行機の出発する時間まであと2時間半。
ホームに入ったユウとマサシの目の前に普通列車が到着。間違ってこれに乗ってしまわないかどきどきしたが、さすがにこれには乗らなかった。もしもこれに乗ってしまったらその瞬間に旅が終了してしまっていただろう。
「あー、ほらほらやっぱり。次の電車だよ」
時刻表を見ながら言うユウ。今回の修行では早くもユウがリーダーとしてのポジションに収まりつつある。
「へっへー、見てくださいよ先生。iPod touchにいろんな情報入れてきたんです。」
時刻表を見ると成田空港に着くのは9時20分くらいになりそうだ。そして彼らはまだ調べていないことがまだあることに気がついていない。
電車に乗り込んで30分。
「いやー、マジやばかったね。普通列車に乗ってたら間に合わなかったよ。」
そう言うユウに星原君が応じる
「最初っから大冒険だね」
「和やかに話し込んでいることろ申し訳ないが、君たちはすでにミスをひとつ犯している。」
びくっと身をこわばらせるユウとマサシ。
「切符?いや、違うよね?」必死に頭をめぐらせるユウ
しばらくして心配になったのかマサシは席を立ちユウと星原君の前に来る。
必死で考え込む二人の横で『自分はわかっているぞ』という顔の星原君。
そんな彼の耳元で私はつぶやいた。
「次にひとつ間違えたらゲームオーバーだ」
その言葉でさすがに顔色の曇る星原君。
彼は次に間違えるであろうことは把握していたがそれが『ゲームオーバー』になるという私の言葉に驚いたようだ。
「次はぁ~空港第2ターミナルぅ~空港第2ターミナルぅ~」
車内放送で顔色が変わるユウとマサシ。
「え?第一?第二?どっち?」
あせるユウ。
「降りる?降りるか?」
ユウに判断を丸投げのマサシ。
星原君は僕との打ち合わせどおり、ユウとマサシが降りるというまで着席。
そうこうしているうちに電車の扉が開いた。
多くの乗客が降りていくのを見て
「降りましょう!!ここですきっと!!」
意を決したユウ。
コバンザメのようについていくマサシ。
降りる準備のできていた私と星原君はすぐに行動に移った。もともと彼らが降りようとしなくてもぎりぎりのタイミングで降りる打ち合わせが私と星原君の間では完了していたから。
「えー、正解です」
普段できるだけ口を挟まない私だが、今回だけは口を挟ませてもらった。ここから先は一つミスをしたら飛行機に乗れなくなってしまうのだ。ベトナム航空のチェックインは1時間前までしかできない。また、飛行機のゲートは出発30分前には搭乗完了していなければならない。 つまりほとんど余裕はないのだ。
「えーっと、それでどっちに行ったらいいんだっけ?」
悠長な態度のユウにさすがに私もあせる。
「航空会社は?」
ベトナム航空なのだが、それはもちろん言わない。
「どこでしたっけ?え?知らないっすよ」
「・・・eチケットの控えを見てごらん」
「・・・・・・・・・いや、書いてないっす」
確かにVNというコードしか書いてない。
「VNってのはベトナム航空の略だ」
「 おー、あったあった。」
ベトナム航空の場所を指差し喜ぶユウ。
「えーっと、それからどっちに行くんだっけかなぁ・・・」
eチケットを見直そうとするユウ。
それにつられてマサシも自分の分のeチケットを見直す。
さすがにもう間に合わない。
「飛行機の出発まであと1時間8分。飛行機のチェックインて、飛行機の出発1時間前までなの知ってる?」
私の言葉に青くなる3人 。運動部よろしくダッシュする。
「いいかい、そもそもチェックインというのは2時間前には済ませておかないといけないんだ。」
「どっちだ?」
「たぶんこっち」
「走れ!!」
私の言葉が耳に入っていないような様子で必死で進む3人。やっと事態を飲み込んだようだ。
「君たちのミスは、星原君の遅刻時間を考えずに最初の予定通り事を進めたことであって・・・」
「ちょ、どっち?あれ?」
「北ウィング?南ウィング?」
「いや、俺に言われても・・・ってかあと五分もないぞおまえら!!」
「土屋先生、どっちですか?!」
なにやら会話が一方通行になってる模様。
「・・・あっち・・・」
残念ながら彼らに私の言葉は届いていないらしい。最初からあせりなさいよ、お前たち。というかさすがに出国前にこれだけバニクったのは今までに例がない。
なんとかチェックイン・カウンターの近くまで来た3人だが、空港は広い。残り時間はあとわずか・・・
幸運にもすぐそこにベトナム航空のカウンターが。しかしユウもマサシもカウンターの区別もつかないらしい。
「せんせぇー!!」
「あー、はいはい、あそこです。すぐそこ。」
なんとか間に合った。計算どおり。ちょっとだけひやりとしたけど。ぎりぎり滑り込みで搭乗券を発行してもらう。
実は塾を出るときにアメリカのデルタ航空本社にベトナムの北の大都市であり首都でもあるハノイへの便に空きがあることを確認済みだったので、最悪行き先をそちらに変えることも考えてはいたのだが、まぁどちらにしても計画通り。
そしてカウンターの後ろにある時計の針は今ぴったり9時30分をさしている。しかし、この時間のロスが最後まで影響すると気づいていたのはこのときは私だけだったのではないだろうか?
何も気づかない彼らを待つ今回の修行は、実は今までの中でも1,2を争う難易度だったのだ。
運よく塾の目の前に止まっていたタクシーがあったのでそれを拾う。運転手はさっきまで車内で寝ていたようだったが、プロだから寝起きでも事故を起こしたりはしないだろう。
無事に王子駅に到着。ここから日暮里まで行き、日暮里から京成線に乗り換える。本当は日暮里までタクシーで移動したほうが楽なのだが、少しでも節約をしたいので電車に乗る。
日暮里駅での乗り換え、二人ともその辺に遊びに行くような格好だ。誰もこれらから彼らが海外でハードな旅行をするとは考えていないだろう。星原君も楽しくてたまらないといった表情だ。
そして私は星原君におもむろに500ドルほどを差し出した。
「貸しておくから持っていてくれ。最悪僕に何かあった場合は君が子供たちを安全に日本まで連れてくるんだよ」
「え・・・マジですか・・・でも俺も空港で両替・・・」
「いいから持っていたまえ、理由は後でわかる」
マサシとユウの第一関門。京成線への乗継だ。彼らには3つの選択肢がある。2000円払ってスカイライナーに乗るか、1000円払って特急や普通列車に乗ることだ。
「ここは節約しないといけないから、金のかからない方で行きましょう」
そう言うユウとそれに賛同するマサシ。ちなみに飛行機の出発する時間まであと2時間半。
ホームに入ったユウとマサシの目の前に普通列車が到着。間違ってこれに乗ってしまわないかどきどきしたが、さすがにこれには乗らなかった。もしもこれに乗ってしまったらその瞬間に旅が終了してしまっていただろう。
「あー、ほらほらやっぱり。次の電車だよ」
時刻表を見ながら言うユウ。今回の修行では早くもユウがリーダーとしてのポジションに収まりつつある。
「へっへー、見てくださいよ先生。iPod touchにいろんな情報入れてきたんです。」
そういって得意げにiPodを取り出すユウ。『その情報で本当に足りるといいね』という言葉を飲み込み、笑顔で
「じゃぁお手並み拝見と行きましょうか」
と答える私。
時刻表を見ると成田空港に着くのは9時20分くらいになりそうだ。そして彼らはまだ調べていないことがまだあることに気がついていない。
電車に乗り込んで30分。
「いやー、マジやばかったね。普通列車に乗ってたら間に合わなかったよ。」
そう言うユウに星原君が応じる
「最初っから大冒険だね」
「和やかに話し込んでいることろ申し訳ないが、君たちはすでにミスをひとつ犯している。」
びくっと身をこわばらせるユウとマサシ。
「切符?いや、違うよね?」必死に頭をめぐらせるユウ
しばらくして心配になったのかマサシは席を立ちユウと星原君の前に来る。
必死で考え込む二人の横で『自分はわかっているぞ』という顔の星原君。
そんな彼の耳元で私はつぶやいた。
「次にひとつ間違えたらゲームオーバーだ」
その言葉でさすがに顔色の曇る星原君。
彼は次に間違えるであろうことは把握していたがそれが『ゲームオーバー』になるという私の言葉に驚いたようだ。
「次はぁ~空港第2ターミナルぅ~空港第2ターミナルぅ~」
車内放送で顔色が変わるユウとマサシ。
「え?第一?第二?どっち?」
あせるユウ。
「降りる?降りるか?」
ユウに判断を丸投げのマサシ。
星原君は僕との打ち合わせどおり、ユウとマサシが降りるというまで着席。
そうこうしているうちに電車の扉が開いた。
多くの乗客が降りていくのを見て
「降りましょう!!ここですきっと!!」
意を決したユウ。
コバンザメのようについていくマサシ。
降りる準備のできていた私と星原君はすぐに行動に移った。もともと彼らが降りようとしなくてもぎりぎりのタイミングで降りる打ち合わせが私と星原君の間では完了していたから。
「えー、正解です」
普段できるだけ口を挟まない私だが、今回だけは口を挟ませてもらった。ここから先は一つミスをしたら飛行機に乗れなくなってしまうのだ。ベトナム航空のチェックインは1時間前までしかできない。また、飛行機のゲートは出発30分前には搭乗完了していなければならない。 つまりほとんど余裕はないのだ。
「えーっと、それでどっちに行ったらいいんだっけ?」
悠長な態度のユウにさすがに私もあせる。
「航空会社は?」
ベトナム航空なのだが、それはもちろん言わない。
「どこでしたっけ?え?知らないっすよ」
「・・・eチケットの控えを見てごらん」
「・・・・・・・・・いや、書いてないっす」
確かにVNというコードしか書いてない。
「VNってのはベトナム航空の略だ」
「 おー、あったあった。」
ベトナム航空の場所を指差し喜ぶユウ。
「えーっと、それからどっちに行くんだっけかなぁ・・・」
eチケットを見直そうとするユウ。
それにつられてマサシも自分の分のeチケットを見直す。
さすがにもう間に合わない。
「飛行機の出発まであと1時間8分。飛行機のチェックインて、飛行機の出発1時間前までなの知ってる?」
私の言葉に青くなる3人 。運動部よろしくダッシュする。
「いいかい、そもそもチェックインというのは2時間前には済ませておかないといけないんだ。」
「どっちだ?」
「たぶんこっち」
「走れ!!」
私の言葉が耳に入っていないような様子で必死で進む3人。やっと事態を飲み込んだようだ。
「君たちのミスは、星原君の遅刻時間を考えずに最初の予定通り事を進めたことであって・・・」
「ちょ、どっち?あれ?」
「北ウィング?南ウィング?」
「いや、俺に言われても・・・ってかあと五分もないぞおまえら!!」
「土屋先生、どっちですか?!」
なにやら会話が一方通行になってる模様。
「・・・あっち・・・」
残念ながら彼らに私の言葉は届いていないらしい。最初からあせりなさいよ、お前たち。というかさすがに出国前にこれだけバニクったのは今までに例がない。
なんとかチェックイン・カウンターの近くまで来た3人だが、空港は広い。残り時間はあとわずか・・・
幸運にもすぐそこにベトナム航空のカウンターが。しかしユウもマサシもカウンターの区別もつかないらしい。
「せんせぇー!!」
「あー、はいはい、あそこです。すぐそこ。」
なんとか間に合った。計算どおり。ちょっとだけひやりとしたけど。ぎりぎり滑り込みで搭乗券を発行してもらう。
実は塾を出るときにアメリカのデルタ航空本社にベトナムの北の大都市であり首都でもあるハノイへの便に空きがあることを確認済みだったので、最悪行き先をそちらに変えることも考えてはいたのだが、まぁどちらにしても計画通り。
そしてカウンターの後ろにある時計の針は今ぴったり9時30分をさしている。しかし、この時間のロスが最後まで影響すると気づいていたのはこのときは私だけだったのではないだろうか?
何も気づかない彼らを待つ今回の修行は、実は今までの中でも1,2を争う難易度だったのだ。
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